管理会社が一番時間を取られている仕事は、募集でも家賃回収でもなかった
管理会社をやっていると、よく聞かれることがあります。
「一番大変な仕事は何ですか」
たぶん多くの人は、入居者の募集とか、家賃の回収とか、クレーム対応を想像すると思います。僕も始める前はそう思っていました。
違いました。
今うちで一番時間を取られているのは、入退去とクレームが出たときの「工事の手配」です。
なぜ工事の手配が一番重いのか
理由は3つあります。
ひとつ目。入退去では、原状回復工事が必ず発生すること。「今回はやらなくていいか」がない。退去が出れば、確実に発生します。
ふたつ目。うちは古い物件を多く管理していること。築古は入居後の修繕も多い。給湯器、水漏れ、エアコン。募集の前も、住んでいる間も、工事が出続けます。
みっつ目。これが一番大きいのですが、職人がいない。
「職人がいない」というのは、正確に言うと「頼めば来る職人はいるが、決まった取引先がない」ということです。今日空いている人を探して、現地を見てもらって、見積を取って、日程を合わせる。これを1件ごとにやっている。
僕は不動産の会社をやりながら、内装の会社もやっています。それでもこうです。工事の手配で困っているのは、外注しか持っていない管理会社だけじゃありません。
なぜそうなったか。原因は僕にあります
ここは正直に書きます。原因の大半は、僕が管理エリアを散らしたことです。
うちの管理物件は、埼玉・東京・千葉・栃木に散らばっています。増やすときは、いい物件があれば県をまたいでも受けてきました。棟数は増えました。売上も増えました。
でもその結果、職人の手配が全部バラバラになりました。
職人さんは基本、動ける範囲が決まっています。さいたま市の職人に千葉の現場は頼めない。栃木の物件のために、栃木の職人をまた一から探す。エリアをひとつ増やすたびに、職人ネットワークをゼロから作り直しているのと同じです。
しかも、量がまとまらないから安くならない。ここが痛い。
うちの内装部門のクロス張替えは1,088円/㎡(剥がしも処分もコミコミ)です。これは、同じ職人さんにたくさん発注しているから出せる値段です。一般の大家さんが1部屋だけ直接頼むと、だいたいこの2〜3割増しになります。悪意でも何でもなく、数がまとまらないからです。
エリアを散らすというのは、自分で自分を「1部屋だけの客」にしていくことでもありました。
「DXしましょう」で解決する話ではなかった
この話をすると、システムで解決しませんかと言われます。工事手配のアプリを入れましょう、DXしましょう、と。
先日も補助金がらみで同じ提案を受けました。でも、僕はこう答えました。
一番大きな問題は管理物件が4県に散らばっていることなので、まず管理をさいたま市周辺に決めれば、この問題はほぼ解決します。
手配のシステムを入れても、栃木に職人がいないという事実は変わりません。散らばったまま効率化しても、散らばったものを速く回すだけです。速く回すより、回す数を減らすほうが効きます。
範囲を絞るのは、諦めることじゃない。僕はこれに気づくのにだいぶ時間がかかりました。
大家さんが今日できること
ここからは、管理を任せる側の話です。管理会社を選ぶとき、こう聞いてみてください。
「うちの物件の地域に、決まった職人さんはいますか」
管理費が何%かより、こっちのほうが効きます。理由は3つあります。
- 空室期間が変わる。退去から工事完了までが2週間か1か月かで、家賃1か月分が変わります
- 工事単価が変わる。その会社が同じエリアで数を出していれば、単価はまとまります
- クレーム対応の速さが変わる。水漏れの日に来られる人が近くにいるかどうか
そして、もしその管理会社の管理エリアが広く散らばっていたら、少し警戒していいと思います。範囲が広いのは、対応力ではなく未整理かもしれません。少なくともうちはそうでした。
なお、修繕費の扱い(資本的支出になるか修繕費で落ちるか)は税務の話になります。ここは金額や工事内容で変わるので、必ず顧問税理士さんに確認してください。僕が言い切れる話ではありません。
まとめ
- 管理会社が一番時間を取られているのは、募集でも家賃回収でもなく工事の手配
- 原因は職人不足そのものより、エリアを散らしたこと
- 散らすと、手配が増えて、単価も上がる(数がまとまらないから)
- DXより先に、範囲を決めるほうが効く
- 大家がやることはひとつ。「この地域に決まった職人はいますか」と聞く
僕はこれを、4県に広げてから気づきました。これから管理を任せる人、これから物件を増やす人は、先に決めてしまったほうがいいです。
最後になりますが、さいたま市周辺の物件で賃貸管理をお探しの方は、ご連絡をお待ちしております。

